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教育研究費支出と管理経費支出の会計処理

教育研究費支出と管理経費支出の会計処理

(2021年6月1日更新)

1.教育研究費支出と管理経費支出の会計処理

 学校法人会計における教育研究費支出と管理経費支出の小科目の内訳としては以下のものが定められています。学校法人会計基準では以下の小科目しか記載されていませんが、形態分類に従って適当な科目をつけていくことが予定されており、実際、多くの学校法人で様々な勘定科目が設定されています。

 

【教育研究経費支出】

小 科 目 内   容
消耗品費支出
光熱水費支出 電気、ガス又は水の供給を受けるために支出する経費をいう。
旅費交通費支出
奨学費支出 貸与の奨学金を除く。

 

【管理経費支出】

小 科 目 内   容
消耗品費支出
光熱水費支出
旅費交通費支出

 

 教育研究費支出と管理経費支出はその区分が重要になります。以下では、教育研究費支出と管理経費支出の区分について確認します。

2.教育研究経費支出と管理経費支出の区分

 教育研究経費支出と管理経費支出の区分の方法としては、教育研究経費の範囲を広狭どちらでとらえるかの問題があります。

 

 広く解する説は、もともと学校法人は、教育・研究を事業目的としているので、学校法人のすべての経費は、本来、教育・研究のためのものであると解します。しかし、管理経費の区分がおかれているので、しいて区分するなら最小限のもの、たとえば、法人本部関係経費の程度に限られるべきであると主張します(「教育研究経費と管理経費の区分について(報告)について(通知)」解説2、昭和46年11月27日雑管第118号)。

 

 これに対して、狭く解すべきだとする説は、学校法人の経費はいずれも教育・研究を目的とするものに違いないが、それを承知の上で経費を2区分にすることとされたのは、教育や研究の現場において、それらの活動と直接に関係するいわば教育・研究の直接経費のみを「教育研究経費」として予定していたものと解釈しなければならない、と主張します(「教育研究経費と管理経費の区分について(報告)について(通知)」解説2)。

 

 このふたつの主張から、是非はともかくとして、教育研究支出費を比較的に広く解する方向を採る結果となりました。学校法人財務基準調査研究会の報告では、教育研究経費と管理経費の区分については以下のように報告されています。なお、括弧書きは通知で記されている補足説明です。

 

教育研究経費と管理経費の区分について

 次の各項に該当することが明らかな経費は、これを管理経費とし、それ以外の経費については主たる使途に従って教育研究経費と管理経費のいずれかに含めるものとする。

1.役員の行う業務執行のために要する経費および評議員会のために要する経費

(「役員の行う業務執行のために要する経費」とは役員会の経費および役員の旅費、事業費、交際費等の経費を指すものであること)

2.総務・人事・財務・経理その他これに準ずる法人業務に要する経費

(法人本部におけるこれらの業務のみならず、学校その他の各部門おけるこの種の業務に要する経費も含めることが妥当であること)

3.教職員の福利厚生のための経費

4.教育研究活動以外に使用する施設、設備の修繕、維持、保全に要する経費(減価償却費を含む。)

5.学生生徒等の募集のために要する経費

(入学選抜試験に要する経費は含まないものとすること)

6.補助活動事業のうち食堂、売店のために要する経費

(寄宿舎に要する経費を教育研究経費とするか、管理経費とするかは、各学校法人における寄宿舎の性格と実際に即して学校法人において判断するものとする)

7.附属病院業務のうち教育研究業務以外の業務に要する経費

3.教育研究経費支出と管理経費支出の区分の具体的な検討

 上記の通知のとおり、限定列挙されている7項目に該当するものは必ず管理経費とします。例えば、光熱水費のように教育研究用及び管理用の双方に関連しているものについては、それぞれ直接把握するか、その使用割合など合理的な配分基準によって按分します。

 

 一方で、7項目の列挙されてない経費、例えば私学団体関係費のようなものは、その主たる使途に従って教育研究経費か管理経費かのいずれかに処理します(学校法人委員会研究報告第30号「教育研究経費と管理経費の区分に関するQ&A」Q1、改正平成26年9月3日、日本公認会計士協会)。

 

 

 以下では、「建物の取壊し費用」「補助活動事業にかかる経費」「公開講座・課外講座等の収入」「スクールバス・給食事業」について解説します。

 

●建物の取壊し費用


 従来から使用していた固定資産の除去等により取壊しのための支出が生じた場合は、取壊しの対象となった資産の使途に応じて経費処理します。すなわち、教育研究関係の固定資産の取壊し費用は、教育研究経費とし、管理関係の固定資産の取壊し費用は、管理経費として処理します。

 

 しかし、教育研究諸活動の維持・継続のための支出か否かを重視して、取壊しにより教育研究活動が停止する場合には教育研究経費とすべきではないとする有力な見解もあるので、取壊し経費の経費区分の原則的な考えは、上記によるのが妥当ですが、建物等の取壊し後の土地を教育研究関係から管理関係へ使途変更する場合には、管理経費処理を認めるものとします(同第30号Q2)。

 

 なお、土地とともに取得した建物を取り壊した場合には、自ら土地を利用する目的で土地付き建物を取得し、その建物を取り壊した場合には、取壊しに当たって生じた支出を経費処理せずに、土地の取得価額に算入します(同第30号Q3)。

 

●補助活動事業にかかる経費


 食堂、売店及び全寮制以外の寄宿舎に係る経費は管理経費とし、全寮制寄宿舎に係る経費は教育研究経費とします。全寮制とは、教育研究目的により1年生全員の寄宿を義務付ける等の場合をいうのであって、単に遠隔地からの学生の一部に対して寄宿舎を用意しておく場合は含みません。上記以外の補助活動事業に係る経費区分は寄宿舎事業の区分の考え方を準用します(同第30号Q4)。

 

 なお、この考え方は補助活動収入に限定するもので、付随事業・収益事業収入の他の小科目の収入には関係ありません(同第30号Q5)。

 

●公開講座・課外口座等の収入

 

 公開講座や課外講座等の収入は補助活動収入で処理されている場合が多いですが、その場合は②と同様に考えて経費処理していいのかが問題となります。補助活動事業としては、一般的に以下の(1)から(3)が挙げられます。

 

(1)食堂、売店、寄宿舎等の事業

(2)税務上は収益事業と考えられるが、寄附行為で収益事業として定めていない事業

(3)学校教育のカリキュラムの中では取り扱われていない教育補完事業等

 

 (1)と(2)については上記②の取扱いとなりますが、(3)の事業については②の取扱いを適用するには無理があります。

 

 したがって、公開講座や課外講座等の収入といった学校教育の補完として考えらえるような事業で、かつ、付随事業・収益事業収入(大科目)の中に補助活動収入とは別の小科目(例えば「公開講座収入」)を設けてその科目で収入を処理しているものについては、上記②の取扱いを適用せず、教育研究経費処理を認めるものとします。この考え方によると、収入の処理科目によってその経費が教育研究経費か管理経費かに区分されて処理されるので、上記の科目細分については十分な注意が肝要です。

 

 なお、この場合、同じような名称を用いながら、その内容は千差万別のことが多々あるので事業の的確な実体把握に留意しなければなりません(同第30号Q6)。

 

●スクールバス・給食事業

 

 給食事業もスクールバス事業も、いずれの事業もそれなりに教育的意味を持っていることを考慮すると、②の取扱いをそのまま適用することには大変難しい問題を含んでいます。給食事業やスクールバス事業の教育性の有無については、種々の主張があり、その性格付けは難しいところでありますが、これらの事業についても②と同様の取扱いとなります。

  

 なお、スクールバス・給食等の事業にかかる収入は、必ずしも「補助活動収入」に限定されることはなく、合理性が認められる限り「学生生徒等納付金収入」で処理されることも認められます(同第30号Q7)

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