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付随事業・収益事業収入の会計処理

付随事業・収益事業収入の会計処理

(2021年6月1日更新)

1.付随事業・収益事業収入の内訳と内容

 学校法人会計における付随事業・収益事業収入の小科目の内訳としては以下のものが定められています。

 

小 科 目 内   容
補助活動収入 食堂、売店、寄宿舎等教育活動に付随する活動に係る事業の収入をいう。
附属事業収入 附属機関(病院、農場、研究所等)の事業の収入をいう。
受託事業収入 外部から委託を受けた試験、研究等による収入をいう。
収益事業収入 収益事業会計からの繰入収入をいう。

2.補助活動事業に関する会計処理方法

 補助活動事業の経理を課税上又は管理上等の理由により、特別会計として区分している場合であっても、私立学校法第26条に定める収益事業に該当しないため、補助活動事業会計は、一般会計と合併した上で計算書類を作成しなければなりません(学校法人委員会実務指針第22号「補助活動事業に関する会計処理及び表示並びに監査上の取扱いについて」第1項(改正平成26年9月30日、日本公認会計士協会))。

 

 また、補助活動事業の収支については、学校法人会計基準第5条ただし書きによって純額表示することができますが、貸借対照表科目については、純額表示することができません。

 

●総額表示

 

 総額表示による場合は、例えば、売上高、販売手数料等は「(大科目)付随事業収入・収益事業収入ー(小科目)補助活動収入」として、受取利息は「受取利息・配当金収入」として表示します。

 

 また、経費は「管理経費」(寄宿舎に要する経費で教育研究経費とするものを除く。)として、給与は「人件費」として表示します。

 

 売店等の売上原価に属する項目については、資金収支計算書では仕入高を、例えば「(大科目)管理経費支出―(小科目)補助活動仕入支出」として、事業活動収支計算書では売上原価を、例えば「(大科目)管理経費ー(小科目)補助活動収入原価」として表示します。

 

●純額表示

 

 純額表示による場合の収支相殺の範囲は、事業活動収支計算書科目(同一内容で資金収支計算書に使用されている科目を含む。以下同じ。)に限るものとし、資金収支計算書のみに使用する科目、すなわち、貸借対照表に係る収支科目は含まないものとします。このことは、相殺範囲の最大限を示したもので、その範囲内であれば適宜に選択した収入項目と支出項目によって相殺できます。

 

支出項目と相殺できる収入側の項目 収入項目と相殺できる支出側の項目

・売上高、受取利息、雑収入とする方法

・売上高、受取利息とする方法

・売上高、雑収入とする方法

・売上高のみとする方法

・売上原価、人件費、経費(借入金利息を含む。以下同じ。)とする方法

・売上原価、人件費とする方法

・売上原価、経費とする方法

・売上原価のみとする方法

 

 収支相殺の結果、収入超過の場合は、例えば「(大科目)付随事業収入ー(小科目)補助活動収入」として、支出超過の場合は、例えば「(大科目)管理経費ー(小科目)補助活動支出」として表示します。

 

 ただし、教育を目的とする寄宿舎に係る収支については、それ以外の補助活動事業の収支と別に相殺し、その結果、支出超過の場合は、例えば「(大科目)教育研究費経費ー(小科目)補助活動支出」とすることができます。

 

 なお、収支相殺の結果は、資金収支計算書書上と事業活動収支計算書上とでは同一にならない場合が多いことに留意しなければなりません。例えば、売店での売上と商品仕入れについて、資金収支計算では売上収入と仕入支出の差額が補助活動収支として計算されますが、事業活動収支計算では売上高と仕入原価(棚卸資産を考慮したもの)の差額が補助活動収支として計上されることになります。

 

●貸借対照表の科目

 

 補助活動事業会計を区分経理していると否とにかかわらず、補助活動事業に係る現金預金、たな卸資産、固定資産等の全ての資産及び買掛金、前受金等の全ての負債が計算書類に表示されなければなりません。

 

 また、たな卸資産(商品、原材料等をいい、貯蔵品となるものを除く。)の年度末有高は、貸借対照表の流動資産の部に「貯蔵品」と区別し、「販売用品」として表示します。ただし、有高が少額の場合は、「貯蔵品」に含めることができます。

3.附属事業収入に関する会計処理方法

 附属事業収入は、病院や農業、研究所等の附属機関の事業にかかる収入をいいます。

 

 大学の附属病院に係る計算書類の記載方法としては、医療に係る収入については、大科目「付随事業・収益事業収入」の中に中科目「医療収入」を設けて処理します。ただし、学校法人において特に必要がある場合は、「付随事業・収益事業収入」と大科目の次に、「医療収入」の大科目を設けて処理することができます。

 

 医療業務に要する経費は、「教育研究経費支出」の大科目の中に「医療経費支出」の中科目を設けて処理することとし、その他の経費については、昭和46年9月30日付け報告「教育研究経費と管理経費の区分について」によって処理するものとします(「大学の附属病院に係る計算書類の記載方法につて(通知)(平成25年11月27日、25高私参第15号)。

4.受託事業収入に関する会計処理

 受託事業収入の意義が、学校法人委員会研究報告第5号「受託事業等の会計処理に関するQ&A」(改正平成26年9月3日、日本公認会計士協会)Q1に規定されています。

 

 受託事業収入とは、仕事の完成を約し、依頼者が仕事の完成に対し、その対価として支払い、依頼された者が受け入れた収入です。

 学校法人で見られる受託事業は、学校法人本来の目的である教育研究活動の一環として行われることが多く、その内容としては調査、研究、検査、情報の収集などが一般的に考えられますが、学校法人の収入が受託事業収入に該当するかどうかの判断は、その実態に基づいて行うことになります。

 

●受託事業収入と寄付金収入の相違

 

 寄付金収入との違いはその対価性にあります。その収入に対価性があるか否かについては、個々の具体的なケースについて実質的に判断することになります。

 

 例えば、特定の研究に対する研究費の名目で受ける収入であっても、その研究成果が広く一般社会、学会等に公表されるなど金銭等の支払者に帰属しない場合は、「寄付金収入」として処理すべきですが、その研究成果が金銭等の支払者に帰属する場合には、当該収入は研究成果に対する対価であり「受託事業収入」となります(学校法人委員会研究報告第5号Q4)。

 

●受託事業収入と医療収入の相違


 医療収入は医療行為の対価として受け入れる収入であり、補助活動収入は学校法人の教育活動に付随する活動に係る事業の収入で、食堂、売店、寄宿舎などに係るものをいいます。これに対し、受託事業収入は、外部から委託を受けた試験・研究等による収入です(学校法人委員会研究報告第5号Q4)。

 

●受託事業収入の帰属の認識

 

 受託事業収入は、契約書の有無、契約上の名義にかかわらず、実質的に学校法人が契約上の受託者である場合は、その契約に係る全ての収入を学校法人の収入としなければなりません。

 

 例えば、当該受託事業が学校法人の施設設備、人員等を使って、組織的に行われる場合には、学校法人が受託したものと考えられます(学校法人委員会研究報告第5号Q2)。

5.研究、調査等を研究室等で受託した場合の処理

 研究室等の収入・支出についても、研究室等は学校法人の組織の一部で、権利義務の主体にはなり得ず、たとえ研究室等の名義で行った事業であっても、それに伴う収入及び支出は、学校法人の収入及び支出となり、その使い方も学校法人の定める規程等に従うことになります(学校法人委員会研究報告第5号Q3)。

 

研究室で発生した経費の計上時期と会計処理

 

 学校法人が受託研究に係る経費等相当額として外部から金銭を受け入れ、同額を当該受託研究を行う研究室に交付する場合、学校法人の金銭支出を経費として認識する時期は、研究室等において、実際に経費が発生した時であり、研究室等に対して必要と認められる資金を学校法人が交付したときではありません。

 

 研究室等における実際の経費等の発生状況に応じて、適切に会計処理する必要があります。また、研究室等において発生した経費は基本的に教育研究経費支出となるべきですが、一部管理経費支出となる場合もあります。小科目については、原則として、形態分類によって処理することになります(学校法人委員会研究報告第5号Q5)。

 

 また、研究室等で機器備品等の固定資産を取得した場合であっても、当該学校法人の固定資産の処理基準に従って、固定資産として貸借対照表に計上しなければなりません(学校法人委員会研究報告第5号Q6)。

 

受託研究が複数期間にわたる場合の会計処理

 

 受託研究等の対価として金銭を収受し、当該受託研究が一会計期間のうちに完了せず数期間に及ぶ場合には、以下の3通りの方法が認められています(学校法人委員会研究報告第5号Q7)。

 

◇ 完成工事基準

 対価として収受した金銭及び支出した金銭は、その受託研究等が完了するまでの間は、前受金又は前払金とし、受託研究が完了した会計年度の教育活動収支の事業活動収入又は事業活動支出とする方法

 

◇ 工事進行基準

 受託研究の進捗割合に応じて収入及び支出を計上する方法

 

◇ 現金主義

 上記の2通りの方法は個別に収入及び支出を管理することが必要になり、また進捗割合に応じた収支の計算をするには受託事業ごとの収入総額及び支出総額を見積もることが必要となり、全ての受託研究に係る収入及び支出をこのように会計処理することは実務上困難な場合も予想されるので、収入及び支出があった時に会計処理することも認められます。

6.治験収入と医師派遣の謝礼など

 医科大学等において行われる治験に係る収入は、治験が医薬品会社等からの委託によって行われ、臨床データも委託者に提供され、治験の報酬は全て医薬品会社等から学校法人に支払われ、患者本人には一切請求しないのが通常であることから、受託事業収入として会計処理することが適当であると考えられます(学校法人委員会研究報告第5号Q8)。

 

 提携先の病院に対して医師を派遣し、それに対する謝礼を受けとった場合は、大科目「雑収入」、小科目は、例えば「医師派遣手数料収入」等の適当な科目で処理することになります(学校法人委員会研究報告第5号Q10)。

7.収益事業収入の会計処理

 収益事業収入については、収益事業会計の章で詳細に解説します。

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