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学校法人の貸借対照表・有形固定資産

学校法人の貸借対照表・有形固定資産

(2021年6月1日更新)

1.有形固定資産の表示

 貸借対照表の有形固定資産は次表のように計上されます(学校法人会計基準別表第三)。

 

科目 備考
大科目 中科目 小科目



 有形固定資産

貸借対照表日後1年を超えて使用される資産をいう。耐用年数が1年未満になっているものであっても使用中のものを含む。
土地
建物 建物に附属する電気、給排水、暖房等の設備を含む。
構築物 プール、競技場、庭園等の土木設備又は工作物をいう。
教育研究用機器備品 標本及び模型を含む。
管理用機器備品
図書
車両
建設仮勘定 建設中又は製作中の有形固定資産をいい、工事前払金、手付金等を含む。

 

2.有形固定資産の評価

 資産の評価については、学校法人会計基準で以下のように定められています。

 

学校法人会計基準 第25条(資産の評価)

 資産の評価は、取得価額をもってするものとする。ただし、当該資産の取得のために通常要する価額と比較して著しく低い価額で取得した資産又は贈与された資産の評価は、取得又は贈与の時における当該資産の取得のために通常要する価額をもってするものとする。

 

 学校法人会計では、取得原価主義を採用しており、取得価額をもって評価することになります。ただし、学校法人の場合、贈与や低廉譲渡が多く行われ、そうすると取得価額がゼロもしくは著しく低い価額で計上されることになり、貸借対照表が学校法人の正しい財政状態を示さなくなる可能性が高くなります。

 

 このため、学校法人会計基準第25条但書において、贈与や低廉譲渡の場合は、当該資産を取得するために通常要する価額を付すことにしています。

 

 さて、この取得価額ですが、取得価額には資産の購入対価だけでなく、買入手数料や運送費、土地の整備費、不動産取得税などの付随費用を加えた金額になります。不動産取得税などの間接附随費用については取得原価に含めないことが認められていますが、買入手数料や土地の整備などの直接附随費用については金額が少額の場合のみ取得価額に含めないことができます。

3.有形固定資産計上の重要性基準と少額重要資産

●固定資産の計上基準

 機器備品として計上される資産のうち、取得価額に金額的な重要性がないものについては、少額資産として固定資産に計上せず、消耗品費等の費用として経費処理することが認められています。

 

 いくらを少額資産とするのかは学校法人ごとの経理規定に委ねられていますが、1個当たり5万円とするケースから、法人税法上の規定にならって1個当たり10万円とするケースが多いようです。ただ、この金額は学校法人の規模や事務コストとの兼ね合いで決定されるため、一概にいくらがよいかということは言えません。


 なお、知事所轄法人では都道府県によって計上金額に制限がある場合もあり、1個当たり10万円までと定められている都道府県もあるため注意が必要です。

 

●少額重要資産

 一方で、少額であっても固定資産の計上を求められるものがあり、それを「少額重要資産」といいます。少額重要資産は1個当たりの金額としては小さいけれども群としてとらえると学校法人経営上で重要となる資産をいい、学校法人委員会研究報告第20号「固定資産に関するQ&A」(改正平成22年6月9日、日本公認会計士協会)のⅠ、1‐5で、少額重要資産の判断基準が示されています。


  • 学校法人の性質上基本的に重要な資産(学生生徒等の机、椅子、ロッカー又は図書館等における書架等、教育研究上基本的に重要資産)であること
  • 常時多額(多量)に保有することが目的遂行上必要とされる資産であるかどうか

  

 なお、少額重要資産については、経理規定等に具体的な内容を明記することが望ましいとされています。 

4.減価償却計算

 減価償却については、学校法人会計基準で以下のように定められています。

 

学校法人会計基準 第26条(減価償却)

 固定資産のうち時の経過によりその価値を減少するもの(以下「減価償却資産」という。)については、減価償却を行うものとする。

2 減価償却資産の減価償却の方法は、定額法によるものとする。

 

 固定資産に計上された資産については、減価償却を通じて事業活動支出に計上され、毎年費用化されていきます。一般の企業会計では減価償却の方法がいろいろと認められていますが、学校法人会計では定額法しか認められていません。

 

 少額重要資産についても、減価償却に代えて取替法を採用することは認められていません(学校法人委員会研究報告第20号「固定資産に関するQ&A」(日本公認会計士協会)3‐3)。

 

 定額法では、具体的に以下のように計算されます。

 

【定額法の算式】

 減価償却費 = (取得価額 - 残存価額) ÷ 耐用年数

 

●残存価額

 残存価額は耐用年数経過後の残存価値で、耐用年数経過後の売却予想額などが残存価額と考えられます。残存価額はそれぞれの学校法人で定めます。なお、残存価額ゼロとして計算する場合でも、実際には備忘価額として1円などを残すことがよくあります。

 

 

●耐用年数

 耐用年数は、学校法人委員会報告第28号「学校法人の減価償却に関する監査上の取扱い」(日本公認会計士協会)で定められている「固定資産耐用年数表」をベースに設定したり、税法上の財務省令の耐用年数をベースに設定したり、各法人によって取扱いは異なります。学校法人で決めた耐用年数について、経理規定等に明記する必要があります。


 中古資産の場合の耐用年数は、当該資産の経過年数等を勘案して残存使用可能期間を見積もって耐用年数を設定しますが、実際にはその見積もりが難しいことから、法人税法上の中古資産の耐用年数の設定方法にならって残存使用可能期間を設定することが実務的には多いようです(委員会報告研究報告第20号「固定資産に関するQ&A」3‐3)。

 

  固定資産の経済的価値の著しい低下がある場合は、耐用年数の見積もりを変更し、過年度の減価償却資産のやり直し(不足分の計上)を行うことも考えられますが、学校法人会計では固定資産の原価配分をやり直す意義が乏しいことから、過年度の減価償却計算のやり直しまでは求められません。

 

 ただ、耐用年数を再設定して、以後の減価償却計算を短い耐用年数に基づく減価償却計算を行ったほうが、経済価値の著しい低下や陳腐化等を適切に反映できるので望ましいと考えられます(委員会報告研究報告第20号「固定資産に関するQ&A」3‐7)。

 

●未使用期間等の減価償却額

 工事完成後、引渡しを受けた固定資産を長期間にわたって使用しない場合、又は一部未使用部分がある場合であっても、時の経過により、その価値が減少するものは、未使用期間又は未使用部分についても減価償却をします(委員会報告研究報告第20号「固定資産に関するQ&A 3‐4」)。

 

 また、休止中の施設設備の減価償却も同じく減価償却計算が行われます。但し、これらの減価償却額は管理経費に計上されます(委員会報告研究報告第20号「固定資産に関するQ&A」3‐6)。

5.個別償却とグループ償却

 個々の固定資産ごとに減価償却計算をする方法を「個別償却」といい、資産をグルーピングしてグループで減価償却計算を行う方法を「グループ償却」といいます。学校法人の機器備品について、取得年ごとに同一耐用年数のものをグループ化してグループ償却を採用することが多いです。

 

 個別償却を採用するか、グループ償却を採用するかは学校法人の会計方針に従うことになりますが、所轄庁によっては採用すべき償却方法を規定している場合もあるため、これがある場合にはそれに従います。

 

 グループ償却が行われている場合は、備忘価額が付されることなく残存価額はゼロとして減価償却計算が行われます。また、償却終了時には、現物が使用されている場合であっても償却終了年度で除去処理が行われます。なお、会計上は除去処理されたとしても、別途現物管理は行うべきものであるので留意が必要です。

6.会計年度の中途で取得した固定資産

 会計年度の中途で固定資産を取得した場合、減価償却額の計算は、原則として年間減価償却額を月数按分します。ただし、重要性がない場合には、取得時の会計年度においては、以下の簡便法も認められます(学校法人委員会報告第28号「学校法人の減価償却に関する監査上の取扱いについて」の一部改正(改正平成13年5月14日、日本公認会計士協会)。

 

  • 償却額年額の2分の1の額により行う。
  • 償却を行わず、翌会計年度から行う。
  • 償却額年額により行う。

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