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リスクアプローチ監査と学校法人特有のリスク評価

リスクアプローチ監査と学校法人特有のリスク評価

(2021年6月1日更新)

1.リスクアプローチの概念

 この章では、学校法人監査がどのような手法で行われるかについて解説します。

 

 学校法人監査も一般企業の監査と同様に、リスクアプローチという手法を用いて行います。

 

 リスクアプローチとは、虚偽の表示が行われる可能性の要因に着目し、その評価を通じて実施する監査手続やその実施の時期及び範囲を決定することにより、より効果的にかつ効率的に監査を実施しようという考え方です。


 学校が小規模で取引も少なく、すべての仕訳が検討可能な場合もあるかもしれませんが、ほとんどの場合は、限られた監査資源の中ですべての取引を検討することはできません。


 また、公認会計士等が監査基準に従って行う監査では、「重要な」虚偽の表示がある場合は監査意見に影響を及ぼすため、重要な虚偽の表示を見逃さないように監査を行わなくてはいけませんが、すべての虚偽表示を発見することまでは求められていません。


 このため、重要な虚偽表示が起きる可能性が高い環境や取引のリスクを検討し、リスクが高いところにより多くの人員や時間など監査資源を投入して、果的かつ効率的に監査を行うことになります。

2.学校法人のリスク評価

 では次に、学校法人のリスク評価方法に移ります。

 

 監査人は内部統制を含む学校法人とその環境を理解したうえで、計算書類全体レベルの重要な虚偽表示のリスクと、計算書類項目レベルの重要な虚偽表示のリスクを評価するため、リスク評価手続を実施します(学校法人会計問答集(Q&A)第18号「監査基準委員会報告書第29号『企業及び企業環境の理解並びに重要な虚偽表示のリスク評価』を学校法人に適用する場合の留意点」(平成18年3月31日、日本公認会計士協会Q2)。

 

 学校法人にも、監査基準委員会報告書 315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」が適用されるため、質問、分析的手続、観察及び記録や文書の閲覧、ウォークスルーなど、企業のリスク評価と共通した手続が行われます。

 

 一方、手続自体は企業と共通しているものの、学校法人と企業では、事業目的や事業環境、計算書類の様式など違いがあります。


 そのため、例えば分析的手続では、予算や消費収支計算書項目等を考慮し学校法人の収入支出等の特徴に留意するなど、学校法人特有の論点を意識しながら手続を行う必要があります。

3.学校法人の事業上のリスク

 ここでは、経営環境など学校法人特有の事業上のリスクについて解説します。

 

 学校法人の経営環境は、少子化による志願者の減少などから大変厳しい状況にあり、経営状態が悪化している法人が増加しつつあるため、理事者が財務状況を実態よりも良く見せようとする動機が働きやすい環境にあります。そのため、監査人は、計算書類項目だけではなく、理事者の関与による重要な虚偽表示の可能性についても気を配らなければなりません。

 

 このように、学校法人の事業目的と目的達成のための事業戦略に関連して、計算書類に重要な虚偽の表示をもたらす事業上のリスクとその要因には、以下の例が挙げられます(学校法人会計問答集(Q&A)第18号「監査基準委員会報告書第29号『企業及び企業環境の理解並びに重要な虚偽表示のリスク評価』を学校法人に適用する場合の留意点」(平成18年3月31日、日本公認会計士協会)Q5)。 

 

事業上のリスクの要因 事業上のリスク
大学の新設や学部増設のための所轄庁への認可申請 申請書類の不備により認可が遅延する。設置基準への不適合により認可されない。
大学の新設、学部・学科の増設や改組 入学者数が当初計画に達しない。
既存の学部・学科の社会ニーズへの不適合 既存の学部・学科の定員割れが生じる。
新しい会計基準の適用及び開示 会計基準を不完全又は不適切に適用する。会計基準適用に当たってコストが増加する。
規制の変更 予測できない規制の強化又は緩和が生じる。
ITの利用 会計システムと業務処理過程が整合しない。

4.学校法人特有の統制環境

 統制環境についても、学校法人特有のリスクがあります。企業は持ち分があるのに対して、学校法人は寄附財産で設立されており、持ち分という概念がありません。そのため、ガバナンス体制も企業と異なります。


 学校法人の統制環境については、経営組織等について以下の項目に留意する必要があります(学校法人会計問答集(Q&A)第18号「監査基準委員会報告書第29号『企業及び企業環境の理解並びに重要な虚偽表示のリスク評価』を学校法人に適用する場合の留意点」(平成18年3月31日、日本公認会計士協会)Q7)。 


  • 役員数、教員・職員数、年齢構成はどのような状況か。
  • 理事会、理事長、理事、監事及び評議員会それぞれが有効に機能しているか。
  • 法人経営の決定権限が特定の理事に集中していないか。
  • 理事の交替の頻度は高くないか。
  • 理事会及び評議員会の開催頻度、付議案件は適切なものであるか。
  • 経営と教学との関係は良好であるか。
  • 組織図上、各職務の責任者が明確になっており、職務権限規程も整備されているか。
  • 事務局の幹部職員が特定の役員の親族等に偏っていないか。
  • 事務局は法人の規模に応じた適正な人員構成であり、主たる部署の責任者の実務経 験年数は十分なものであるか。 

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