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監査報告書と監査意見

監査報告書と監査意見

(2021年6月1日更新)

1.「独立監査人の監査報告書」

 公認会計士又は監査法人は、私立学校振興助成法第14条第3項の規定に基づいて監査を実施し、監査報告書を提出します。


 この章では、監査報告書の記載内容や、監査意見について解説します。


 まず、監査報告書の記載内容は以下の通りです(学校法人委員会実務指針第36号「私立学校振興助成法に基づく監査上の取扱い及び監査報告書の文例」(日本公認会計士協会 最終改正2020年4月9日)Ⅲ監査上の取扱い1.監査報告書)。


(1)表題:「独立監査人の監査報告書」

(2)監査報告書日:日付は決算承認に関する理事会開催日以降で、関連する審査を完了した日以降

(3)宛先:原則として理事会宛

(4)監査事務所の所在地

(5)監査人の署名

(6)監査意見

(7)監査意見の根拠

(8)計算書類に対する理事者及び監事の責任

(9)計算書類の監査における監査人の責任

(10)利害関係


 上記以外に、継続法人の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であって、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続法人の前提に関する重要な不確実性が認められ、学校法人が継続法人の前提に関する事項を注記した場合、監査報告書の「監査意見の根拠」の次に「継続法人の前提に関する重要な不確実性」という見出しを付した区分を設け、継続法人に関する事項を記載することとなります。


 また、計算書類に記載されている事項について、重要な会計方針の変更、重要な偶発事象、重要な後発事象等、利用者が計算書類を理解する基礎として重要であるため、当該事項を強調して利用者の注意を喚起する必要があると判断した場合、監査報告書に「強調事項」区分を設けて記載することがあります。


 さらに、計算書類に記載されていない事項について、監査、監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連するため監査報告書において説明する必要があると判断した場合、監査報告書に「その他の事項」区分を設けることがあります。

2.監査報告書の文例

 無限定適正意見を表明する場合の監査報告書の文例(収益事業を行っていない場合で監査人が公認会計士の場合)です。 

  

独 立 監 査 人 の 監 査 報 告 書 

×年×月×日

学校法人○○○ 

理事会 御中 

○○○○公認会計士事務所 

○○県□□市(注1) 

公認会計士 ○○○○ 印

○○○○公認会計士事務所 

○○県□□市(注1) 

公認会計士 ○○○○ 印

 

監査意見 

 私たちは、私立学校振興助成法第14条第3項の規定に基づく監査報告を行うため、×年×月×日付け○○○告示第××号に基づき、学校法人○○○の×年度(×年4月1日から×年3月31日まで)の計算書類、すなわち、資金収支計算書(人件費支出内訳表を

含む。)、事業活動収支計算書、貸借対照表(固定資産明細表、借入金明細表及び基本金明細表を含む。)(注2)、重要な会計方針及びその他の注記について監査を行った。

 私たちは、上記の計算書類が、学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に準拠して、学校法人○○○の×年3月31日をもって終了する会計年度の経営の状況及び同日現在の財政状態を全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。 

 

監査意見の根拠 

 私たちは、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における私たちの責任は、「計算書類の監査における監査人の責任」に記載されている。私たちは、我が国における職業倫理に関する規定に従って、学校法人から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。私たちは、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。 

 

計算書類に対する理事者及び監事の責任 

 理事者の責任は、学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に準拠して計算書類を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない計算書類を作成し適正に表示するために理事者が必要と判断した内部統制を整備

及び運用することが含まれる。 

 計算書類を作成するに当たり、理事者は、継続法人の前提に基づき計算書類を作成することが適切であるかどうかを評価し、継続法人に関する事項を記載する必要があると判断した場合には、当該事項を記載する。 

 監事の責任は、学校法人の財務報告プロセスの整備及び運用における理事の業務執行の状況を監視することにある。

 

計算書類の監査における監査人の責任 

 監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての計算書類に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から計算書類に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不

正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、計算書類の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。 

 監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。 

 ・ 不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。 

 ・ 計算書類の監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。

 ・ 理事者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに理事者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。 

 ・ 理事者が継続法人を前提として計算書類を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続法人の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続法人の前提に関する注記がなされている場合は、監査報告書において計算書類の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する計算書類の注記事項が適切でない場合は、計算書類に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、学校法人は継続法人として存続できなくなる可能性がある。

 ・ 計算書類の表示及び注記事項が、学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた計算書類の表示、構成及び内容、並びに計算書類が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。 

 監査人は、監事に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。 

 

利害関係 

 学校法人と私たちとの間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。 

以 上 

 

(注1)事務所の都市名を記載する場合は、「○○県□□市」のように記載する。 

(注2)監査事項として、資金収支内訳表及び事業活動収支内訳表が指定されている場合には、「資金収支計算書(資金収支内訳表及び人件費支出内訳表を含む。)、事業活動収支計算書(事業活動収支内訳表を含む。)、貸借対照表(固定資産明細表、借入金明細表及び基本金明細表を含む。)」と記載する。

 学校法人委員会実務指針第36号「私立学校振興助成法に基づく監査上の取扱い及び監査報告書の文例」(最終改正2020年4月9日、日本公認会計士協会)) 

3.監査意見

 監査意見は「無限定適正意見」以外にも、状況に応じて「限定付適正意見」、「不適正意見」又は「意見不表明」という見出しを付して、適切に記載します 学校法人委員会実務指針第36号「私立学校振興助成法に基づく監査上の取扱い及び監査報告書の文例」(最終改正2020年4月9日、日本公認会計士協会)Ⅲ1(6))。


 計算書類がすべての重要な点で適正であれば無限定適正意見を付すことができますが、意見に関する除外事項がある場合や、適正とは言えない場合、重要な監査手続ができずに意見表明ができない場合などには、状況に応じた監査意見を記載します。


 以下4つの監査意見について詳述します。


●無限定適正意見


 理事者の作成した計算書類が、学校法人会計基準に準拠して、学校法人の経営状況及び財政状態を全ての重要な点において適正に表示していると認められる場合に、無限定適正意見を記載します。


定付適正意見


  理事者が採用した会計方針の選択及びその適用方法、計算書類の表示方法に関して不適切なものがあり、その影響が無限定適正意見を表明することができない程度に重要ではあるものの、計算書類を全体として虚偽の表示に当たるとするほどではないと判断したときには、除外事項を付した限定付適正意見を表明しなければならないとされています(監査基準 第四「報告基準」四 第1項)。 


 また、重要な監査手続を実施できなかったことにより、無限定適正意見を表明することができない場合において、その影響が計算書類全体に対する意見表明ができないほどではないと判断したときには、除外事項を付した限定付適正意見を表明しなければならないとされています(監査基準 第四「報告基準」五 第1項)。 


●不適正意見 


 理事者が採用した会計方針の選択及びその適用方法、計算書類の表示方法に関して不適切なものがあり、その影響が計算書類全体として虚偽の表示に当たるとするほどに重要であると判断した場合には、計算書類が不適正である旨の意見を表明しなければならないとされています(監査基準 第四「報告基準」四 第2項)。 


●意見不表明


 重要な監査手続が実施できなかったことにより、計算書類全体に対する意見表明のための基礎を得ることができなかったときには、意見を表明してはなりません。この場合には、意見の根拠の区分に、計算書類に対する意見を表明しない旨及びその理由を記載しなければならないとされています(監査基準 第四「報告基準」五 第2項)。 



 なお実際の監査では、公認会計士等が行う監査の過程で除外事項が発見されても、学校法人は指導に従って修正を行うことが通常であり無限定適正意見以外が表明されることはほとんどありません。

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