事業活動収支計算書の目的
(2021年6月1日更新)
1.事業活動収支計算書の目的
事業活動収支計算書は、教育活動、教育活動以外の経常的な活動、それ以外の活動の区分に対応する事業活動収入と事業活動支出の内容を明らかにするための計算書で、学校法人会計基準で作成が求められている計算書です。
学校法人会計基準 第15条(事業活動収支計算の目的) 学校法人は、毎会計年度、当該会計年度の次に掲げる活動に対応する事業活動収入及び事業活動支出の内容を明らかにするとともに、当該会計年度において第29条及び第30条の規定により基本金に組み入れる額(以下「基本金組入額」という。)を控除した当該会計年度の諸活動に対応する全ての事業活動収入及び事業活動支出の均衡の状態を明らかにするため、事業活動収支計算を行うものとする。 一 教育活動 二 教育活動以外の経常的な活動 三 前2号に掲げる活動以外の活動 |
【リンク】事業活動収支計算書【第五号様式】
事業活動収支計算は、一般の会社でいうところの損益計算書に似ているものです。学校法人は営利目的の活動を行っていないため損益計算を行う必要はありませんが、永続的な運営そのものは要請されており、永続的な運営のためには事業活動収支が均衡していなければなりません。企業でいうところの企業資本維持の原則です。
こうしたことから、学校法人においても事業活動の均衡が達成されているかを把握するための計算書の作成が求められ、事業活動収支計算書の作成が義務付けられています。
事業活動収支計算では、経常的な事業活動とそれ以外の臨時的な事業活動に区分し、経常的な事業活動は学校法人の本源的な活動である教育活動とそれ以外(財務活動及び収益事業)に区分します。
教育活動収支差額は本業の収支を確認する区分なので、ここがマイナス計上となる場合は経営状況が相当厳しいものと考えられます。通常の会社でいう営業利益のようなものです。これに教育活動外収支を加えた経常収支差額は、通常の会社でいう経常利益のようなものです。さらに、これに特別収支を加えた基本金組入前当年度収支差額が通常の会社でいう当期純利益に該当します。
2.事業活動収支計算の方法
事業活動収支計算の方法は、学校法人会計基準で以下のように規定されています。
学校法人会計基準 第16条(事業活動収支計算の方法) 事業活動収入は、当該会計年度の学校法人の負債とならない収入を計算するものとする。 2 事業活動支出は、当該会計年度において消費する資産の取得価額及び当該会計年度における用役の対価に基づいて計算するものとする。 3 事業活動収支計計算は、前条各号に掲げる活動ごとに、前2項の規定により計算した事業活動収入と事業活動支出を対照して行うとともに、事業活動収入の額から事業活動支出の額を控除し、その残額から基本金組入額を控除して行うものとする。 |
●事業活動収入の計算(第1項)
「収入」は、事業活動収入となる収入、負債の増加を伴う収入、資産の減少を伴う収入がありますが、第1項を見ると、事業活動収入には「負債とならない収入」を事業活動収入と定義しているため、規定通りに考えると資産の減少を伴う収入(例えば、貸付金の回収など)も事業活動収入に含まれることになってしまいます。しかし、実際には事業活動収入は、資産の減少を伴う収入は含みません。そこで、以下のように解釈します。
- 「負債とならない収入」=「純資産に影響を与えない取引」(貸借が、資産、負債科目だけの取引。)
- 「事業活動収入」=「純資産が増加し影響を与える取引」
この解釈に従えば、例えば、現物資産での寄付については、純資産を増加させる取引であるため、事業活動収入に含めて計算することになります。また、貸借対照表項目における増減取引についても純資産に影響を与える取引については、事業活動収入に含めることになります。例えば、資産の売却益については、資産項目を増加させた取引になるわけですが、この売却益部分については事業活動収入に計上します。
●事業活動支出の計算(第2項)
この考えは、事業活動支出についても同様に考えることができます。第2項は、「消費する資産の取得価額」と「用役の対価」に基づいて計算するとありますが、事業活動収入と同様に考えて、「純資産の減少という影響を与える取引」が事業活動支出となります。
支出には、事業活動支出となる支出、負債の減少を伴う支出、資産の増加を伴う支出に分類されますが、負債の減少を伴う支出と資産の増加を伴う支出は純資産に影響を与えないため、事業活動支出に含まれません。
例えば、固定資産の取得に伴う支出は事業活動支出に該当しませんが、そのうち「消費する資産」については事業活動支出に含まれることになります(つまり減価償却額)。なお、「消費する資産の取得価額」と規定されているのは、取得価額をベースに減価償却計算を行うことを明記するためと考えられます。
●事業活動支出のみ計上される支出
さきほどの減価償却額のように支払資金にかかわらない取引で、資金収支計算書には計上されませんが、事業活動支出にのみ計上される勘定科目があります。減価償却額以外には、退職給与引当金繰入額、徴収不能引当金繰入額などがあります。
事業活動収入と事業活動支出の定義は非常にわかりづらいものとなっていますが、日商簿記などを勉強した読者にとっては 、一般の企業の損益計算書をイメージすると理解しやすいかと思います。
3.事業活動収支内訳表の記載方法等
事業活動収支計算では、事業活動収支内訳表を作成しなければなりません。作成方法としては、資金収支内訳計算書と同様になります。
学校法人会計基準 第24条(事業活動収支内訳表の記載方法等) 事業活動収支内訳表には、事業活動収支計算書に記載される事業活動収入及び事業活動支出並びに基本金組入額の決算の額を第13条第1項各号に掲げる部門ごとに区分して記載するものとする。 2 事業活動収支内訳表の様式は、第6号様式のとおりとする。 |
【リンク】事業活動収支内訳表【第六号様式】